
『アリス、僕は君の守り人』より パート①
僕にとって君は魔法の国にいるペガサスのようだった。
どんなに友達になりたいと思っても、遠くの茂みからこっそりとその姿を眺めるだけ。
僕の存在に気づかれたら、君はすぐに消えてしまうのではないかと思っていた。
そんな僕はずっと君に憧れていた。
春の風が優しく僕らを包んでくれる。まるでふきのとうが、今か今かと冷たい空気を押しやって芽を出すように、僕はいつも君の隣にいられる季節を待ちわびていた。
僕にとって春の風とは、君との未来を期待させてくれるものだったんだ。
君はこの季節の匂いを感じると、決まってこう言っていた。
「私、春がとっても大好きなの。だって春の風はとっても優しくってなんだか懐かしい気持ちを運んでくれるから。それにね、ほら、こうやって自由に走り回れるでしょ」
君はそう言いながら、両腕をそれが翼であるかのようにしなやかに操る。
そんな君を見つめながら、僕はこう思っていたんだよ。
まるで君は白い翼の生えた美しい天使なのではないのかと。
あの頃の僕の夢はこの素晴らしい世界を、君と共に探検することだったんだ。
あの頃の僕は確信していた。
僕たちは絶対に素晴らしいパートナーになれるだろうって。
でもね、気がつくと君は、遠い遠いお国へと一人で行ってしまった。誰にも見つからない場所へと行こうとしたみたい。
僕にはわかっていたよ。君はきっと見つけてほしかったんだよね。
絵:erico
文:との
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